歯科金属アレルギー
歯科の治療では、銀歯やブリッジ、義歯などに金属を使用することが多いものですが、特に保険治療で使用する金属は、金属アレルギーを引き起こすことが考えられます。このためメタルフリー治療「金属を一切使用しない治療」が、最近注目されています。
歯科金属アレルギーの判定として
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医師による治療を1ヶ月以上うけても症状が改善しない。
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パッチテストで陽性の金属除去により、症状の改善が認められる。
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症状の改善が、ステロイドや免疫抑制剤を使用することなく1年以上継続している。
これらに当てはまれば、該当すると考えます。
歯科金属アレルギーの特徴
・年齢では、20代>30代>40代>50代 20-39才が全体の約7割を占める。
・性別では、女性>男性 2.6倍女性に多い
・病名としては、アトピー性皮膚炎が7割、掌蹠嚢胞症・湿疹が1割
・症状 皮膚炎が多い
(口腔内の症状はまれで遠隔の皮膚に症状が現れることが圧倒的に多い。)
金属は、酸化還元反応により腐食する性質があり、特に口内環境は水分と酸の存在、また異種金属の接触によりさらに腐食が生じやすい環境といえます。
腐食した際に生じる金属イオンが、人体のタンパク質と結合することでアレルギー反応が生じることがわかっており、「歯科金属アレルギー」は、口腔内金属が口の粘膜や消化管から吸収された後、血行性に全身に運ばれ、到達した部位で汗などを介して炎症反応を起こす「全身性接触皮膚炎」といえます。
歯科用金属アレルギー対象成分
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金 Au
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銀 Ag
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銅 Cu
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パラジウム Pd
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亜鉛 Zn
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インジウム In
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ニッケル Ni
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コバルトクロム Co
これらは、歯科治療での金属材料の成分として含まれるものです。
特に、保険の銀歯では金、パラジウム、銀、銅が多く含まれています。
掌蹠嚢胞症
歯科に関係する皮膚症状として有名です。
症状は、手のひらや、足の裏などに小さな水膨れができたり治ったり慢性化します。
原因は、金属アレルギー、慢性炎症、喫煙とされていますが、金属アレルギーよりもむしろ慢性炎症の関与が注目されています。また最近の研究では、扁桃炎との関係性も報告されています。
口の中の慢性炎症、つまり歯周病も大きく関与していることが報告されています。
歯周病が悪化すると、体内に「炎症性サイトカイン」という物質が作られ、これが血液を介して皮膚に入り悪さをするというものです。
歯周病の治療によりこれを改善するためにも、お口のセルフケアーのみならず歯科医院でのプロフェッショナルケアーも大切であるといえるでしょう。
ただ、歯科金属を原因とするアレルギーがあったとしても、体の中の慢性炎症の存在による多因子によって引き起こされている疾患である可能性に疑いはありません。
よって、まず皮膚科での診断のもとに連携した治療が好ましいと考えます。
皮膚科での診断書により金属アレルギーの確定がなされた場合は、銀歯や金属の被せをすべて樹脂製の詰め物(レジン)、CADCAM冠にやり替えることが可能です。
ただし、ブリッジの場合(一部可能)や義歯の金具部分については承認されておらず、すべてをメタルフリーにすることには限界があります。
この場合、自費のジルコニアセラミックをブリッジに応用、義歯に関してはスルホンアミドの金具のない義歯を作り替えることによりクリアできるかと思います。
当院では、このような症例での治療も行っております。詳しくはお問い合わせください。